田後の夏vs秋の劇的変化:8月15.5m→10月6.4mの急落の理由

2026-03-16

鳥取県岩美町の田後(たじり)は、日本海側を代表するダイビングスポットです。1,392件の実測データから浮かび上がったのは、8月の15.5mから10月の6.4mへ、わずか2ヶ月で9.1mも急落するという劇的な季節変動でした。なぜこのような急落が起きるのか、日本海特有の海洋プロセスから解説します。

15.5m

8月(ピーク)

6.4m

10月(底)

−9.1m

2ヶ月の落差

1,392

実測観測数

田後の月別透明度データ

透明度(m)前月比
1月7.8m-
2月8.2m+0.4m
3月8.5m+0.3m
4月8.1m-0.4m
5月7.9m-0.2m
6月8.8m+0.9m
7月9.7m+0.9m
8月15.5m+5.8m
9月9.4m-6.1m
10月6.4m-3.0m
11月7.1m+0.7m
12月7.5m+0.4m

8月→9月で−6.1m、9月→10月で−3.0mと、秋口に急速に透明度が低下します。

急落の原因:日本海の秋のプロセス

原因1:秋の鉛直混合

夏の間、日本海の海水は温度差によって成層化します(表層が暖かく、深層が冷たい)。この層構造が光の透過を助け、8月に15.5mという高い透明度が実現します。しかし秋になると気温が下がり、表層の海水が冷やされて重くなり、深層水と混合し始めます(鉛直混合)。この混合が深層の栄養塩と懸濁物質を表層に持ち上げ、透明度を急激に低下させます。

参考:気象庁「日本海の海洋構造」

原因2:プランクトンの再分配

鉛直混合で深層から栄養塩が供給されると、秋の植物プランクトンブルーム(大量増殖)が起きます。日本海では特にこの「秋ブルーム」が顕著で、9〜10月にクロロフィル濃度が上昇します。これがダイバーの体感する透明度の低下に直結します。

原因3:冬季モンスーンの到来

10月以降、日本海側では北西の季節風が強まります。この風が海面を荒らし、波浪による底質の巻き上げと沿岸流の変化で、さらに透明度が低下します。田後のような浅い湾では特に影響が大きく、10月の6.4mという低い値はこのモンスーンの影響も含まれています。

太平洋側との比較:なぜ逆パターンなのか

太平洋側の多くのサイト(伊豆海洋公園、富戸など)は秋〜冬に透明度がピークを迎えます。これは田後とは正反対のパターンです。太平洋側では秋になると夏の濁り(プランクトン・降雨の影響)が収まり、冬にかけて黒潮の影響でクリアな水が入ります。一方、日本海側は夏の成層化でクリアになり、秋の混合で濁るという、まったく逆のサイクルを持っています。

日本海側(田後)

ベスト:8月(15.5m)

ワースト:10月(6.4m)

太平洋側(伊豆)

ベスト:12〜2月(15m+)

ワースト:4〜6月(8m前後)

田後でダイビングするなら

透明度重視なら8月

年間で唯一15mを超える8月がベスト。お盆の時期は混雑しますが、透明度は抜群です。

10月以降は覚悟を

10月以降は6〜8m台が続きます。マクロ撮影やウミウシ観察など、近距離の被写体を楽しむスタイルが合います。

7月も意外に良い

7月の9.7mは年間で8月に次ぐ2番目。梅雨明け直後、成層化が進んだタイミングを狙うと良好な透明度に当たることがあります。

データについて

田後のデータはBlue Lineダイビングショップのブログから1,392件を収集。月別平均は各月の全観測の平均値。透明度は各日の報告値(最小・最大の平均)を採用しています。

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