AIはダイビングの透明度をどこまで予測できるか
2026-03-06
IOPでは予測誤差わずか2.5m。しかし与那国ではAIが完全に使い物にならない。同じモデルなのに、なぜサイトによって精度がこれほど違うのか? AIの「得意な海」と「苦手な海」をデータで解明しました。
AI精度スコアとは
モデルの精度評価にはAI精度スコア(0〜100%)を使用します。100%に近いほど予測精度が高いことを示します。AI予測精度82%は「実際の透明度の変動の82%をモデルが説明できている」ことを意味します。
一般に、自然現象の予測でAI精度スコアが50%を超えれば実用的、70%を超えれば高精度と見なされます。天気予報の気温予測がおよそ95%程度であることを考えると、透明度のように多数の要因が複雑に絡み合う現象でAI予測精度82%は十分に高い値です。
サイト別予測精度
伊豆海洋公園:AI予測精度82%の高精度モデル
最も高い予測精度を達成したのは伊豆海洋公園で、AI予測精度82%です。これは3,151件という豊富な観測データに支えられています。伊豆海洋公園は毎日のようにログデータが記録されており、モデルの学習に十分なデータ量が確保されています。また、透明度の季節変動パターンが明確で(冬に高く春に低い)、これをモデルが正確に学習できていることも高精度の要因です。
このモデルでは、前日の透明度、水温変化、衛星から得た海水拡散係数(Kd490)が主要な予測因子として機能しています。特に黒潮の接近に伴う水温変化が透明度と強く連動しており、これをモデルが捉えることで高い精度を実現しています。
伊戸:AI予測精度56%
千葉県館山の伊戸は1,980件のデータでAI予測精度56%を達成しました。東京湾の出口に位置し、黒潮と親潮の両方の影響を受ける複雑な海域ですが、比較的安定した透明度パターンを持つため、モデルが有効に機能しています。
秋の浜:AI予測精度52%
伊豆大島の秋の浜はAI予測精度52%と中程度の精度です。1,309件のデータがあり、年間を通じて比較的安定した透明度(13〜15m)を示すサイトです。変動幅が小さいため、モデルの予測がベースラインに近くなりやすく、AI精度スコアは控えめに出る傾向があります。
串本:AI予測精度42%
串本は3,168件と最大級のデータ量を持ちますが、AI予測精度42%にとどまっています。黒潮の蛇行が透明度に大きく影響するものの、黒潮の流路変動は数週間〜数ヶ月単位で変化する複雑な現象で、当日の気象データだけでは十分に捉えきれません。黒潮流路データの追加により精度向上の余地があると考えられます。
予測幅による信頼区間
当サイトでは一つの予測値に加えて、予測幅も導入しています。これは下位10%と上位90%の予測値を算出する手法で、「透明度は8〜15mの範囲に80%の確率で収まる」といった幅のある予測を提供します。一つの数値だけでは「予測が外れた」と感じることがありますが、予測幅を併せて提供することで、より実用的な情報になります。
今後の展望
現在のモデルは当日の条件を予測するもので、数日先の予報には対応していません。今後は時系列モデル(GRU、LSTM)の精度向上や、黒潮流路データの統合、さらにはリアルタイム衛星データの活用により、2〜3日先の透明度予報を実現することを目指しています。
また、データ量が少ないサイトについても観測データの蓄積が進めば、順次予測対象に追加していく予定です。
データソース
- AIモデル:AI(45種類の予測に使う情報)+ 予測幅(q10/q90)
- 気象データ:Open-Meteo API
- 海洋データ:Open-Meteo Marine API
- 衛星データ:NOAA ERDDAP(クロロフィルa、Kd490)
- 各ダイビングショップのブログ・ログデータ
- Dive Visibility Forecast — リアルタイム予報