日本の海の透明度は10年で変わった?長期トレンド分析【2015〜2026年】
2026-03-11
ダイバーなら誰もが気になる問い——「昔より海が濁ってきた?それとも良くなった?」。感覚的な印象ではなく、当サイトに蓄積した2015年〜2026年の46,000件以上の実測データで検証します。結論は「全国一律のトレンドはなく、サイトによって改善・悪化が真逆」です。
主要5サイトの年別透明度推移(2015〜2025年)
| 年 | IOP(伊豆) | 与那国 | 越前 | 串本 | 神子元 | 観測件数 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2015 | — | 28 | 7.7 | — | 15.1 | 1,324 |
| 2016 | — | 26.7 | 10.4 | 14.6 | 15.4 | 1,853 |
| 2017 | — | 26.2 | 10.9 | 13.5 | 16.4 | 2,415 |
| 2018 | 16.6 | 25.2 | 7.4 | 11.9 | 17.1 | 3,163 |
| 2019 | 16.1 | 25.2 | 9.2 | 12.8 | 17.4 | 3,885 |
| 2020 | 17.2 | 24.5 | 11 | 13.1 | 15.9 | 3,684 |
| 2021 | 14.6 | 23.9 | 10.2 | 12.7 | 15.5 | 4,755 |
| 2022 | 15.4 | 24.1 | 8.3 | 14.1 | 16.4 | 5,040 |
| 2023 | 15.3 | 24.5 | 8.3 | 13.8 | 15 | 4,843 |
| 2024 | 16.2 | 24.7 | 8.3 | 12.4 | 14.5 | 4,458 |
| 2025 | 14.9 | 24.7 | 9 | 13.9 | 12.9 | 5,057 |
※ 「—」はデータ収集開始前の期間
サイト別10年変化ランキング(2015〜17年平均 vs 2023〜25年平均)
| スポット | 初期(2015〜17) | 最近(2023〜25) | 変化 | 方向 |
|---|---|---|---|---|
| 田後 | 10.7m | 13m | +2.2m | ↑ 改善 |
| 富戸 | 12.1m | 13.1m | +1.1m | ↑ 改善 |
| 平沢 | 9.8m | 10.9m | +1.1m | ↑ 改善 |
| 雲見 | 11.7m | 12.7m | +1m | ↑ 改善 |
| 石垣島 | 20.3m | 20.6m | +0.3m | → 横ばい |
| 青海島 | 10.6m | 10.3m | -0.3m | → 横ばい |
| 串本 | 14.1m | 13.4m | -0.7m | ↓ 悪化 |
| 柏島 | 14.5m | 13.8m | -0.7m | ↓ 悪化 |
| 越前 | 9.6m | 8.4m | -1.2m | ↓ 悪化 |
| 神子元 | 15.6m | 14.1m | -1.4m | ↓ 悪化 |
| 三宅島 | 12.6m | 10.9m | -1.7m | ↓ 悪化 |
| 与那国 | 26.9m | 24.6m | -2.3m | ↓ 悪化 |
| 白浜 | 17m | 13.2m | -3.7m | ↓ 悪化 |
改善しているサイト:田後・富戸・平沢・雲見
田後(鳥取)は10.7m→13.0mと+2.2mの大幅改善。日本海の沿岸流パターンの変化が影響している可能性があります。富戸(+1.1m)・平沢(+1.1m)・雲見(+1.0m)は伊豆の複数サイトが同時に改善しており、2021年前後に最低値を記録した後、回復トレンドにあります。
伊豆の改善は、2020〜2022年頃に黒潮が大蛇行から平常路線に戻ったことと時期が重なります。黒潮大蛇行中は伊豆沖に栄養塩の豊富な沿岸水が滞留しやすく、透明度を下げる傾向があります。
悪化しているサイト:与那国・白浜・三宅島・神子元
最も透明度が低下したのは白浜(和歌山)の -3.7m(17.0m→13.2m)。ただし白浜はデータ収集初期(2015〜17)の件数が少なく(126件)、サンプルの季節的な偏りが影響している可能性があります。
与那国島の-2.3m(26.9m→24.6m)は件数が多く(2,000件以上)信頼性が高いトレンドです。2015〜2017年の平均が28m前後だったものが24〜25mレンジに低下。太平洋十年規模振動(PDO)やエルニーニョの影響で西太平洋の海洋環境が変化した可能性があります。
神子元(-1.4m)と三宅島(-1.7m)も近年の低下が顕著。神子元は2019年に年平均17.4mを記録した後、2025年には12.9mまで低下しています。これは黒潮の流路変動と関係している可能性があります。
「全体的に濁ってきた」のか?
全サイト平均で見ると、2015年の15.6mから2021年に13.6m(-2.0m)まで下がり、その後2025年に15.5mまで回復しています。しかしこれにはサイト構成の変化という大きな要因があります——初期(2015〜17年)は清澄な外洋サイトが主体(13〜17サイト)でしたが、後に比較的濁りやすい内湾サイトも多数追加されました。
個別サイトのデータを見ると、「全国一律に悪化している」という証拠はありません。改善しているサイトと悪化しているサイトが混在しており、気候変動よりも黒潮流路の年々変動や地域の環境変化の影響が大きいと考えられます。
越前の特殊パターン
越前は2015年7.7m → 2020年11.0m → 2024年8.3mと激しく変動しています。日本海では対馬暖流の強弱が年によって大きく変わり、透明度に直接影響します。越前は沿岸の環境変化(陸からの栄養塩流入など)にも影響を受けやすいサイトです。
まとめ
10年間の実測データから言えること:
- 全国的な一方的悪化トレンドはない — 改善サイトと悪化サイトが共存
- 伊豆エリア(富戸・平沢・雲見)は近年改善 — 黒潮流路の安定化が要因と推測
- 与那国・神子元は近年低下傾向 — 外洋環境の気候変動的変化の可能性
- 年々変動が大きいサイト(越前)は気候パターンで読む
「昔の方が海が澄んでいた」という感覚は、特定サイトでは正しく(与那国・神子元)、別のサイトでは逆(田後・富戸)です。客観データで見ることが重要です。