水温と透明度の関係は地域で逆転する — 相関を実測3万件で計算した

2026-03-08

「暖かい南の海は青く澄んでいる」——半分は本当で、半分は嘘です。当サイトの実測で水温と透明度の相関を計算すると、サイトによって符号が逆転します。「暖かい=澄む」場所と「暖かい=濁る」場所が、同じ日本の中に両方あるのです。

まず数字: 相関はプラスにもマイナスにもなる

透明度と水温が同時に記録された観測から、サイトごとにピアソン相関係数(−1〜+1、相関の指標)を出しました。

サイト水温↔透明度の相関読み方
平沢(伊豆・内湾)−0.42暖かい日ほど濁る(最も強い逆相関)
伊戸−0.23〃
富戸(伊豆)−0.17〃
伊豆海洋公園−0.13〃
串本+0.19暖かい日ほど澄む
八丈島+0.28〃
与那国+0.30〃
神子元(外洋)+0.30〃
三宅島+0.32〃
越前(日本海)+0.34暖かい日ほど澄む(最も強い正相関)

平沢の−0.42と越前の+0.34は、符号が真逆です。同じ「水温と透明度」を見ているのに、片方は「冷たいほど綺麗」、もう片方は「暖かいほど綺麗」。これがこの記事の核心です。

なぜ逆転するのか — 平沢(暖かい=濁る)

平沢の月別を見ると理由が見えます。

  • 2月: 水温15.9°C・透明度11.4m(冷たくて澄む)
  • 8月: 水温25.6°C・透明度7.1m(暖かくて濁る)

伊豆の内湾では、水温が上がる=プランクトンが増える季節です。黒潮由来の栄養と日射で植物プランクトンが増殖し、水を濁らせる。冬は水温が下がってプランクトンが減り、澄む。だから「冷たいほど綺麗」になります。伊豆で潜る人が冬の透明度を愛する理由は、この負相関そのものです(冬の伊豆はドライ必須ですが)。

なぜ逆転するのか — 越前(暖かい=澄む)

日本海の越前は逆です。

  • 3月: 水温11.4°C・透明度7.3m(冷たくて濁る)
  • 8〜9月: 水温25〜27°C・透明度10.3m(暖かくて澄む)

日本海側では冬が時化の季節で、荒れた海が底の砂泥を巻き上げて濁らせます。夏は対馬海流が届いて水温が上がり、同時に海が凪いで澄む。ここでは「暖かい=澄む」。濁りを決めているのは水温ではなく"海が荒れているか"で、それがたまたま水温と同じ季節リズムで動くから相関が出る、という構図です。

つまり「相関」は「因果」ではない

この記事の一番大事な注意です。水温が透明度を決めているわけではありません。 背後にある共通要因(季節・プランクトン・波・海流)が、水温と透明度を同時に動かしているだけです。だから:

  • 伊豆で「今日は暖かいから濁ってるだろう」は当たりやすいが、それは水温のせいではなくプランクトンのせい
  • 越前で同じ予想をすると逆に外す
  • よそのサイトの経験則を持ち込むと逆になる——これが遠征ダイバーが一番やりがちな失敗です

実用: 自分のサイトの符号を知っておく

注記: 相関係数は関係の"向きと強さ"の指標で、因果や個別の日の保証ではありません。数値は当サイトの実測分布に基づきます。

データソース

  • 水温・透明度の実測: 当サイトのデータベース(2006〜2026年。両方が同時記録された観測をサイト別に集計、各サイト300件以上)。アーカイブで閲覧可

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